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2. 船舶動静監視

船舶の動静監視手段としてレーダーに勝るものは無いとする考えからこの文をまとめた。

 

2.1 レーダー映像利用上の問題点

無線伝送、電子海図等、レーダー映像表示の関連事項の問題点については別項(第8章の付録)に記述してあるので併せて参照されたい。以下(1)〜(9)に海上監視レーダーの映像を船舶側で表示する場合に留意すべき事項、問題点等を列記した。

 

(1) 船側ではリアルタイムのレーダー映像でなければ利用価値がない。さらに、伝送に伴う時間遅れは極小に押さえる必要がある。生映像(動画)伝送の映像信号形式としては、ラスター信号と複合レーダー映像信号がある。いずれも広帯域伝送路を必要とし、信号の受信については、通常利用されている舶用機器では対応できない。

海岸線のデータ等、固定データは船側が保有しているものを使用すれば、船舶目標などの可変データは、ベクターデータでも高々16KB/scan程度である。ラスターデータの場合も、標準的な640×480ピクセル・アレイを仮定すると、ピクセルあたり1ビット(モノクロ)にすれば約38KB/scanである。船舶側で64kbps回線が使用できれば、海上監視レーダーのアンテナ回転周期内に伝送可能であるが、衛星船舶電話、インマルサットでは4.8kbpsまたは9.6kbpsしか使えないので動画伝送は困難である。

 

(2) 船舶用レーダーのアンテナ回転周期は2秒から3秒程度である。船舶側で、海上監視レーダー映像と船舶レーダー映像を、交互に違和感なく観測するには、陸上側もこれと同程度の回転数が要求されよう。ただし、回転数を増やすと、レーダー映像(動画)伝送に使える時間は少なくなり、また、海上監視レーダーのアンテナ重量増加は避けられない。

 

(3) 小型船舶(内航船、漁船、プレジャーボート等)のレーダーは、船首アップ・相対表示PPI映像が常用されている。安価な簡易型の小型ARPAを搭載している小型船舶もあるが小さな船ほどARPAの普及率は低い。船橋内での取付け場所の関係もあり、内航船の大多数はレーダーを1台しか搭載していない。使い勝手からみて、海上監視レーダー映像を重畳表示、または切り替え表示するような機材は実現困難と考える、さらに、新造船は別にして新規に特殊な目的のための設備をするのは非現実的である。

 

(4) 小型船舶、特に漁船に多数搭載されている簡易電子海図表示装置(ビデオプロッタなど)に海上監視レーダーの映像を表示する案がある。

 

ポケット農林水産統計(平成8年)のデータにより計算すると、表2.1の最下行に示すように、動力漁船(146,584隻)のレーダー装備率は約24%、衛星航法受信装置の装備率は約17%である。衛星航法受信装置を装備している漁船(24,816隻)は、操業上の理由から簡易電子海図表示装置を装備していると推定される。

 

 

 

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